HACCPの制度化

HACCPの制度化

2018年6月13日に公布された食品衛生法の一部を改正する法律で、原則としてすべての食品事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める、ことになりました。具体的には、HACCPに基づく衛生管理が求められますが、小規模事業者等には取り扱う食品の特性に応じた弾力的な取り組みとしてHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を求める事になりました。

HACCPってなに?

HACCPとはHazard Analysis Critical Control Point(危害分析と重要管理点)の頭文字を取ったものです。

HACCP

原材料の受入から最終製品の配送までの各工程における危害要因を科学的に予測し、その危害を予防又は受け入れられるレベルまで低くする工程を連続的に監視、記録する仕組みです。
危害要因には、主に物理的(金属片、石、プラスチック片などの異物)、化学的(農薬、ヒスタミンなどの化学物質)、生物的(病原性細菌、寄生虫など)な危害があります。
工程の連続的監視手段には、保管温度、殺菌温度と時間、冷却温度と時間などがあります。
HACCPを行うには、7原則12手順に沿って進めていきます。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

改正食品衛生法によれば、小規模な事業者等は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を実施すれば良いことになりました。
掃除や清掃は、設備、機械器具類を物理的にきれいな状態(ゴミや埃がない状態)にすることですが、食品衛生では、化学的にきれいな状態(農薬やアレルゲンの残存がない等)、かつ生物的にきれいな状態(食中毒の原因となる微生物等がない、あるいは少ない状態)が必要とされます。
食中毒を予防する3原則(有害微生物をつけない、ふやさない、やっつける)を基本として次の3点を行う事が求められます。

・衛生管理計画を作成する
・衛生計画を実施する
・実施記録をつけて、確認する

自社ですでに行っている衛生管理をもう一度上記要求事項に照らして整理する事が肝要です。各業界団体が作成する手引書を参考に、簡略化されたアプローチによる衛生管理を行う事も出来ます。

表1 HACCPの考え方を取り入れた衛生管理支援の流れ

Step1 導入準備 概要説明
現場視察
Step2 導入 衛生管理計画作成
実施と記録付け
必要な手順書作成
Step3 運用改善(審査)※ 運用して改善

※ 食品安全マネジメント協会では、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理に対してJFS-Aという適合証明を出しています。HACCPの一部の要素を取り入れる事が必要です。ご相談下さい。

HACCPに基づく衛生管理

HACCPに基づく衛生管理を行う事業者は、HACCP7原則に基づき、食品事業者自らが、使用する原材料や製造方法等に応じ、HACCPの計画を作成し、管理を行うことが求められます。表2にHACCP7原則12手順を示します。

表2 HACCP7原則12手順

手順1 HACCPチ-ムの編成
品質、製造、購買などの担当者でHACCPチ-ムを作ります。
手順2 製品の特徴の確認
原材料、規格、包装、保管条件などを書いた仕様書の事です。
手順3 製品の使用方法の確認
製品の使い方です。湯煎する、電子レンジ加熱など。
手順4 工程図(フローダイアグラム)の作成
原料受入から出荷まで、製品を作る流れを書きます。
手順5 工程図(フローダイアグラム)の現場確認
製造現場で、手順4で書いた流れが正しいことを確認します。
手順6(原則1) 危害要因の分析
原料別、工程別に起こりうる危害を分析します。
手順7(原則2) 重要管理点の設定
危害分析の結果から、危害を管理する重要管理点を決めます。
手順8(原則3) 許容限界の設定
重要管理点の管理基準(温度、時間、流量など)を設定します。
手順9(原則4) モニタリング方法の設定
管理基準の測定方法と記録方法を決定します。
手順10(原則5) 是正処置の設定
管理基準が守られなかった時の対処方法(廃棄など)を決めます。
手順11(原則6) 検証手順の設定
HACCPプランが有効であることを確認します。
手順12(原則7) 文書化及び記録保持
記録方法や記録の保管期間を決めます。

HACCPを実施する際のポイントは以下の通りです。

すでに実施している一般衛生管理計画は要求事項を満たしていますか?

一般衛生管理は食品安全の基本をなす部分です。ここが不十分であるとせっかくHACCPプランを立てても食品安全を担保できない可能性が出てきます。

新しい手順や記録用紙は出来るだけ作らないようにしましょう。

実際に食品製造を行っている訳ですから、いま使っている手順書、製造日報や記録紙を出来るだけ使うようにしましょう。もちろん必要な手順などは作成しなければいけませんが。文書を増やすと管理も面倒になり、ひどい場合はダブルスタンダードになってしまいますから。

危害分析を始めとするHACCPプラン作成が大変だ!と思わないで下さい。

危害分析を始めとするHACCPプランを作る時は、各業界団体が手引きを出していれば是非参考にしましょう。もちろん自社の工程や原材料に合わせて、自社のHACCPプランにする事が肝要です。また食品産業センターが公開している資料を使うことも可能です。

HACCPプランを従業員全員に広げましょう。

食品安全は、一般衛生管理と合わせてみんなで築いていくものです。全員が自社で決めた手順やル-ルを守っていくことが大切です。みんなのHACCPです。

表3 HACCPに基づいた衛生管理支援の流れ

Step1 導入準備 概要説明
現場視察(問題点抽出)
HACCP研修
HACCPプラン準備
現場視察
Step2 導入 一般衛生管理確認
7原則12手順を実施
HACCPプランをレビュ-
必要な手順書作成確認
Step3 運用改善(審査)※ 運用して改善

※ 食品安全マネジメント協会では、HACCPに基づく衛生管理に対してJFS-Bという適合証明を出しています。食品安全マネジメントの仕組みの部の要素を取り入れる事が必要です。ご相談下さい。

HACCP認証取得

ご希望があれば両方とも、一般社団法人食品安全マネジメント協会による適合証明を受ける事が可能です。その場合には、食品安全マネジメントの仕組みの一部が適用されますので、食品安全マネジメント協会の認証基準に従って衛生管理計画を構築する必要があります。詳しくはお問合せ下さい。
また各自治体で、独自に食品衛生自主管理制度を設けている場合もあります。ただし、今年公布される省令、政令の内容によっては制度自体が変更になる事もありますので、注意が必要です。

リンク

食品衛生法等の一部を改正する法律の概要(改正の概要)

厚生労働省HACCP

食品産業センター 食品と危害要因分析

一般財団法人食品安全マネジメント協会

東京都食品衛生自主管理認証制度

埼玉県食品衛生自主管理優良施設確認制度

栃木県食品自主衛生管理認証制度(とちぎHACCP)

いばらきハサップ認証制度(茨城県)

群馬県食品自主衛生管理認証制度